今回はビジネスローンの即日融資をテーマに、以下2項目に分けて説明していきます。
①.銀行と融資取引のない人が、その銀行で最も早く借りられる融資は?
②.銀行と融資取引中の人が、その銀行で最も早く借りられる融資は?
① 融資取引のない人が銀行で最も早く借りられる融資は?
銀行で最も早く借りられる融資商品は?
銀行版ビジネスローン:事業者向け小口融資が最速!
銀行で最も早く借りられる融資商品は事業者向け小口融資です。銀行によっては「事業ローン」や「ビジネスローン」と名付けている融資商品で、無担保・小口のパッケージ商品になります。
内容はノンバンク系の事業ローン・ビジネスローンとほぼ同じです。
銀行の事業者向け小口融資(事業ローン)の内容
- 利用者:法人、個人事業主などの事業者
- 金額:3~5百万円以内が主流 最高では1億円程度まで
- 融資形態:証書貸付、またはカードローン
- 融資期間:証書なら分割返済10年まで カードローンは1~2年の更新
- 担保:無担保 金額に応じて担保が必要な場合もあり
- 審査:一般的な銀行融資より、スピーディー(詳細後述)
- 金利:一般的な銀行融資より、高い(詳細後述)
後ほどノンバンク系の事業ローンとの細かい比較を見ていきますが、基本的に上記のような内容はノンバンクの事業ローンと同じです。
もっといえばノンバンクに追随した融資商品であり、ここに銀行の思惑、戦略があります。
銀行の思惑 ノンバンクの顧客を取り込みたい
金融機関同士、あるいはノンバンクとの競争が激しくなり、融資残高を伸ばすために銀行は顧客の裾野を広げました。今まで相手にしてこなかった小口の事業者がターゲットになってきたのです。
これはノンバンクとの客の奪い合いを意味します。
必然的にノンバンクと似た融資商品を銀行が開発し、それが事業者向け小口融資というわけです。
銀行の戦略
上述のように、事業者向け小口融資・銀行の事業ローンはノンバンクの顧客層をターゲットにしていますので、繰り返しになりますが対象は小口の事業者です。
小口には手間とカネは掛けなれない、そのうえで省力化かつ高収益を目指す。これが銀行の戦略です。そのために待ちの営業姿勢で省力化しています。
待ちの営業で省力化
一般に融資の新規開拓は、情報を駆使してリストアップした見込み先を、銀行員が訪問を重ねてやっと取引にこぎつけるといった流れです。
こうしたいわば足で稼ぐやり方が優良な取引先を獲得するための銀行員としての基本中の基本です。
省力化、機械化が進む銀行で、ここは今も変わりありません。
一般的な新規開拓は攻めの営業です。これに対し事業者向け小口融資は待ちの営業であり、待ちの営業により銀行は省力化を図っています。
待ちの営業の表現どおり、事業者向け小口融資では積極的な営業活動をしません。
宣伝はHPに掲載したり、チラシを店頭に置いたりする程度です。
そして人的な営業をかけない代わりに、DMを発送したり電話セールスをしたりと質より量を重視しPRしています。
商品名は「ビジネス」「クイック」などのフレーズを用い、手軽さや早さをアピールしています。また商品名の結びは「ローン」が多く、これなども手軽さ、敷居の低さを強調したい銀行の意図が感じられます。
前後の語句をつなぎ合わせると「ビジネスローン」「クイックローン」といったものになる訳です。
銀行とノンバンクとの比較3ポイント
比較① 商品内容 スペック
- 利用者:同じ
- 金額:同じ 銀行対ノンバンクで比較というよりも、銀行・会社によって差・バラツキあり
- 審査:銀行=遅い(詳細後述)ノンバンク=早い
- 金利:銀行=一般融資より高い(詳細後述)ノンバンク=更に高い
比較② 審査について
まず審査のスピードですが、これはノンバンクに到底太刀打ちできません。
ノンバンクはスピーディーさが売りです。「最短で即日融資可能!」などHPでアピールしています。
銀行の事業者向け小口融資も、もちろんスピーディーが売りではあります。しかし申込みから稟議→書類受付→融資の入金までにどんなに急いだとしても1週間は必要です。
銀行でいうスピーディーとはあくまでプロパーや保証付きの銀行融資に比べたら、という前提なのです。
審査の厳しさは、ノンバンクよりは厳しく銀行の一般的な融資に比べればゆるいといったレベルです。
また審査方法はマニュアル化コンピュータ化され、ここでも徹底的な省力化が進んでいます。金額にもよりますが、例えば融資額3百万円以下なら決算資料不要という銀行すらあります。
比較③ 金利について
銀行:5%~14.9% に対して
ノンバンク:3%~18%といった水準
金利についても、審査基準と同じくノンバンクよりは低金利で銀行の一般的な融資よりは高いといった水準です。
スピーディーで審査もゆるい。これは銀行から見ればリスクが高いわけで、その見返りとして、金利は一般的な融資より高くなるのです。
ここまで書いて銀行の待ちの姿勢や、ノンバンクと比較して優位性がそれほどあるわけではありません。それでは銀行の事業者向け小口融資を借りるメリットはあるのでしょうか?
銀行ビジネスローンの利用メリットは入り口
プロパー融資に比べて保証協会の保証付き融資は多少ハードルが低いものの、基本的にはこれらの銀行融資の入り口は狭き門です。
いっぽう上述のように事業者向け小口融資・銀行ビジネスローンは、一般的な銀行融資に比べると入り口がかなり広く入りやすくなっています。
ここが大きなメリットになる訳です。
その先の一般的な銀行融資を視野に入れているのなら、金利など多少条件が満足できなくても、入りやすい入り口から入ってしまいましょう。
そして借りたものをきちんと返済していくことが銀行にとっての大きなアピールとなり、次の融資につながっていくのです。
あなたを新規融資の見込み先として、銀行員がいつ来るのかはわかりません。
というより、来るかどうかもわかりません。
それなら、まずは自分から銀行の入り口に入ってみてはいかがでしょうか?
② 融資取引中の人が銀行で最も早く借りられる融資は?
とにかくワク(極度枠)を作っておく
ワク(枠)とは?
ワク(枠)とは極度のことです。
当座貸越に代表される融資の形態で、あらかじめ融資の限度額=極度を決めておきその極度の範囲内(極度額の枠)ならいつでも反復利用ができます。
銀行ではこの極度額の枠のことを行内的には略してワクと呼ぶことが多く、例えば「当貸枠1億円」などと表現します。
極度枠を持っていて、あらかじめ契約してあれば、パソコンなどで来店せず即日借入可能です。実はこれが銀行の中で最短最速の融資です。
極度枠の中身・当座貸越の説明は後述することにして、まずその他の融資を説明していきます。
そのほうが、極度枠のメリットがより分かりやすくなるからです。
極度枠以外で比較的早い融資は?
手形割引
約束手形や為替手形など、取引で受け取った受取手形を、その手形の支払期日が来る前に銀行に買い取ってもらう融資。
手形を期日までの日数に応じた手数料を割り引いて銀行が買い取るものですが、銀行では手形を期日まで預かった手形を担保にした融資ととらえています。
一般的な融資に比べれば早く借りられますが、それでも手形の支払人調査に時間がかかる場合があり、融資までの時間は即日~1週間程度です。
預金担保
定期預金(会社名義、社長や事業主本人、家族名義も)を担保にした融資です。
銀行側から見ると、稟議や書類など銀行側にとっての手間は一般的な融資と変わならいのに対して、金利は定期預金の金利+0.5%程度と低いため、あまり取り上げたいとは思わない融資です。
稟議書を書いたり書類を貰ったりの手間は普通の銀行融資と同じ、その上預金を担保として預かるには預かる場所が必要で保管の経費も必要。
また、不動産担保での抵当権設定と同様の手続き、質権を設定するために公証人役場に銀行員が出向いて確定日付を取得するなど手間と労力が必要になります。
それなのに金利は安いので銀行員の人件費だけでも預金担保だけでは完全に赤字になってしまうからです。
顧客にしても、手間を掛けてしかも銀行に嫌がられて預金担保の借入をするくらいなら、いっそのこと定期を解約して使った方が楽です。
以上より、預金担保は実際は現在ほとんど取り扱いが行われていません。
コミットメントライン
銀行融資枠とも呼びます。
複数の銀行が協調し(これをシンジケートといいます)融資枠をつくるものです。
まずもって、コミットメントラインが可能になる顧客になること自体に時間がかかりますし、なれるのは一握りの成功者だけです。現実味はかなり薄いといえるでしょう。
得意先には個別で至急対応するが
ここで3つ見てきたようにあれもダメこれもダメとなると身も蓋もないのですが、そうはいっても本当に早い対応は銀行にはできないのでしょうか?
例えば、業績は悪くなくプロパーで融資を受けているような会社で、ある程度、銀行の担当者と人間関係も構築できているような社長から「ちょっと緊急で資金を融資して欲しい」というような事になった際、急ぎで融資を出す」といった対応はないのでしょうか?
このような得意先は、銀行にとってもいろいろと儲けさせてもらっている大事な顧客です。これからもこういうWin-Winの関係を続けていきたいので、銀行は個別で至急対応します。
それでも稟議から融資金入金までには、やはり数日の時間は必要となってしまうのです。
だから先述した極度枠を作りましょうということになるのです。
極度枠・当座貸越の具体例と理解
当座貸越とは?極度枠
当座貸越とは、当座預金の残高以上に手形や小切手を決済できる融資です。
貸越限度額をあらかじめ設定し、その範囲内で手形などの決済をする仕組みで融資をおこないます。
<具体例>貸越限度額1,000万円のケース
当座預金残高100万円
→1,000万円の小切手を決済した=支払った
→残高はマイナス900万円=貸越限度内(貸越限度額1,000万円のため)
→900万円入金したので→残高は0円に戻った。
上記でマイナス900万円だった日数分が借入していた期間ということになる訳です。
イメージとしては、総合口座貸付と似ていますね。総合口座貸付けは、総合口座にある定期預金残高の90%をワクとして借りることができます。貸越中は預金の残高欄はマイナスで表示されます。
上記具体例で示した貸越限度額を「極度枠」と銀行では呼んできました。
資金繰りを精緻にしなければならない煩雑さや、当座預金がマイナス表示されることが敬遠されたなどの理由もあって、上記した本来の当座貸越はほとんど姿を消し、ワク(極度枠)という言葉だけが残りました。
現在は当座貸越専用口座を作って(貸越専用なので、0から始まり残高はマイナスのみ、当然残高がプラス表示になることはない)融資する当座貸越が主流です。
ですからワク(極度枠)とは、この貸越専用口座の極度額を意味します。
銀行から見た極度枠=銀行から見れば全額借入中
今実際には極度枠を使用していない、つまり借金をしていない状況でも、銀行から見れば全額融資中となります。
当座貸越はいつでも反復利用できます。パソコンで即日利用できるということは銀行から見れば気づかないうちに借り入れされていることもあるということです。
ですから極度枠が500万円なら、銀行は融資残高を常に500万円フルに使用中ととらえます。
実際に500万円全額フルに使っていても、100万円だけ使っても、あるいは未使用だとしても、銀行からみればフル500万円使用中となります。
極度枠=融資取引実績となる強み
極度枠を使っていなくても銀行は融資取引中と考えてくれるということは銀行との取引に有利です。
なぜなら、本当に設備などでまとまった資金が必要になった時などにスピーディーに対応してくれるからです。
あなたは500万円の極度枠を作ったけれど必要が無いので全く使っていなかった。当然利息はかかりません。当たり前ですが、借金していないわけですから。
しかし、上述のように銀行はあなたに対し極度枠をフルに融資していると考えているのです。言い換えればあなたは、銀行から見ればずっと500万円借りている融資取引先なのです。
融資取引中の(実際には利息を払っていないのに)顧客から設備の資金相談があれば、スピーディーに対応してくれるでしょう。また極度枠を持ち続けているあなたにならまず融資を断わることはないでしょう。
極度枠を持ち続ける努力を!
当座貸越などの枠は通常1~2年で更新します。更新といっても預金のような自動更新では無く、銀行で継続するか審査しているのです。
そのためには業況の把握が必要で、つまり決算書が必要になります。
今は極度枠を使っていない=借金していない状況でも決算書は出しましょう。「今借りてないから決算書を渡すのはイヤ」などといっては元も子もありません。
繰り返しになりますが、銀行は現在もあなたに融資中と考えています。ですから、当然決算書提出を拒んではいけないのです。
極度枠を継続するにも審査が必要なのです。
ところで、極度枠が保証協会保証付きなら保証料が必要になります。しかしこれも、いつでも借りられる安心への経費と考えてください。設備などで本当にお金が必要になったときのためだと考えれば決して無駄ではありません。
とにかく極度枠は持ちましょう。そして継続して持ち続けましょう。