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保証付き融資減少の内情を現場の銀行員が解説!プロパー融資が増えた?事業制評価で融資?

更新日:

「中小企業向け融資、リスク恐れず「保証付き」バブル期以来の低水準」
金融機関が中小企業への融資に積極的になっている。企業が債務を返済できなくなったときに肩代わりする信用保証協会の保証を付けた融資は、バブル期の1991年度以来の低水準。一方、銀行による設備資金融資は2008年のリーマン危機後の10年度を底にほぼ右肩上がりで増えている。マイナス金利や景況感の改善を背景に、貸し倒れのリスクを恐れずに融資している実態が浮かんだ。一部には危うさも垣間見える。 (引用:2018/10/19 2:00日本経済新聞 電子版)

現在の銀行では保証付き融資が減少して、プロパー融資が増えているのは事実です。
現役銀行員として、私も現場で実感しています。
ではなぜ保証付融資(マル保融資)が減ったのか?
そしてなぜプロパー融資が増えたのか?

ひとことでいうとそれはプロパー融資ができない銀行は生き残れない、ということです。
日銀の超低金利政策の影響で銀行の競争が激しくなり、企業が銀行を選別できるようになりました。そうした現状では、引用記事のように『リスク恐れず』プロパー融資ができない銀行は競争に勝ち残ることができません。
また。監督官庁の金融庁から「積極的にプロパー融資をしろ」との指示があり、対応できない銀行は、その存在意義を問われかねないという側面もあります。(詳細後述)
ですからもっといえば
「悠長に保証付き融資を売っている場合じゃない」
「リスクなんて考えていられる状況じゃない」ということになります。

いっぽう債務者・つまりお金を借りる顧客側からすれば、銀行間の競争のおかげで
顧客は売り手→条件のいい銀行を選べる→プロパーで低金利、できれば無担保で
極端にいえばこのくらいでないと、借り手=融資する顧客が見つからない現状です。

銀行では、文字通りリスクを恐れず(あるいは考えず?)現役バリバリの若手銀行員が、積極的にプロパー融資を売り込んでいます。
これが『危うさも垣間見える』という部分ですし、私も同感です。
私も現役銀行員、勤続30年の古参です。
自分が入社した1990年代と現在を比べると「時代はかわったなあ」と痛感することしきりです。今回はこうした「昔と今の違い」も織り交ぜながら、保証付き融資が減った理由、プロパー融資が増えた理由をそれぞれ2つずつ説明していきます。

 

保証付き融資が減った2つの理由

①『責任共有制度』導入で、マル保融資は100%の保証から、80%保証になった
②融資手続きはプロパー融資のほうが簡単になってしまった

責任共有制度が原因

2007年に制度が改定され、マル保融資に『責任共有制度』が導入されました。
それまでは代位弁済になっても全額保証され→つまり取りっぱぐれがありませんでした。
ところが制度改訂後は80%保証が主流になり、全額代位弁済されなくなりました。
代位弁済しても保証協会は残りの20%を返済してくれず、最悪回収不可能になるのです。
ですから、
「代位弁済でも100%返済されないなら、プロパー融資とあまり変わらないじゃないか」と銀行は考えるようになりました。

またマル保融資の場合、金利のほかに保証料が必要です。
80%保証になれば、借りる側にとってもリスクは増えます。
(残り20%をどうやって払うか?→現金などいざという時の準備が必要になります)
銀行・顧客双方にメリットが少なくなったのに、保証料を払ってまで借りる人が少なくなった。だから保証付き融資が減ったのです。
そしてもう一つ、プロパー融資の手続きが簡単になったことも要因にあげられます。

融資手続きはプロパー融資のほうが簡単になってしまった

私が入社した1990年代当時のプロパー融資は、事業計画や見積もりなど膨大な資料を銀行に提出し、また担保も必要なので契約書類と担保書類などを準備しなければならず、手続きは大変でした。融資する側の銀行員も大変な手間と労力が必要になりました。
いっぽうマル保融資は、保証協会に提出する申込書類をそろえて、決算書などの資料を付けて協会に提出します。手間はかかりますが、プロパー融資ほど大変ではありません。
マル保融資は簡単、プロパー融資は大変→これが今では逆転しています。それはなぜか?
まずは昔と今、プロパー融資の手続きを比較してみます。

プロパー融資の手続き~昔(1990年代~2000年代中頃)

当時の私がプロパー融資を1件取上げるのにどれだけ苦労したかというと、
①融資申込みの内容などを聞いたあと、どんな資料が必要か調べて顧客に依頼する

②顧客は、必要資料と印鑑証明などをそろえる
(場合によっては段ボール1箱にもなるほど、資料は大量に必要でした)

③担保の現地調査や担保の評価をする

④提出された資料をもとに稟議書を書いて、上司に提出する

⑤上司の決裁がおりて(GOサイン)融資が実行される
書いてしまうと簡単に見えるかも知れませんが、実際には融資実行するまでに平均して
1ヵ月はかかったものです。

手続きの中では、稟議書を書いて上司の決裁をもらうのが、銀行員にとって一番大変な
仕事でした。何度もやり直しや再調査を命令され、ときには稟議書を突っ返されたりもしたものです。顧客からは「いつ借りれるの?」と催促されますし、銀行員には精神的につらい期間でした。
また顧客も、銀行から追加資料を依頼されたり、事業計画の修正を依頼されたりもします。また「根ほり葉ほり」いろいろ聞かれたりして、顧客にとってもつらい、嫌な時間ですが、融資を受けるためには我慢が必要でした。

プロパー融資の手続き~現在

審査のマニュアル化、融資手続のシステム化が進み、現在のプロパー融資手続きは、
上記したような以前のものと比べて簡単になってしまいました。
必要な資料も減りましたし、審査時間も短くなりました。
その理由は次項で詳しく説明していきます。

※余談①

「簡単になってしまった」と書きましたが、これは私の気持ちの表れです。
上記したように、プロパー融資実行には、ほんとうに大変な手間と労力がかかりました。しかし、だからこそ融資を実行できたときの喜び・達成感も大きく、銀行員としてのやりがいを感じることができたものです。
プロパー融資をひとりで成し遂げて、やっと一人前の銀行員。私の銀行ではそういわれていました。
ですから、現在のプロパー融資手続きを考えると、「簡単になってしまったなあ」と感じてしまうのです。もちろん省力化、マニュアル化は悪いことではありませんが、弊害がない訳ではありませんので、こちらも後述します

 

プロパー融資が増えた2つの理由

①プロパー融資は「特別な融資」から「普通の融資」になった
②審査が変わった~「過去を見る複雑な審査」→「今と未来を見る簡単な審査」へ

プロパー融資は「特別な融資」から「普通の融資」になった

従来プロパー融資は、何十年も取引のあるVIP顧客限定の「特別な融資」でした。
しかし現在では「普通の融資」もっというと「単に保証のない融資」になりつつあります。
これは金融庁の方針で「保証・担保に依存しない融資をしろ」「そのために目利き力を高めろ」と指導されているからです。
つまり監督官庁である金融庁がプロパー融資を積極的にやりなさいといっているのです。

上記のとおり、私の入社当時は何年も経験を積んで、それなりの修羅場もくぐってきた猛者になれて、はじめてプロパー融資を取り扱う資格を与えられたものです。
しかし、プロパー融資が普通の融資になり、現在では経験の浅い銀行員でもプロパーの審査ができます。なぜなら先輩の経験・ノウハウがマニュアル化され、審査に利用できるようになったからです。

審査が変わった~「過去を見る複雑な審査」から「今と未来を見る簡単な審査」へ

現在の銀行では、『事業性評価』という手法を使ってプロパー融資を審査します。
『金融機関は、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる。』
(引用:地域金融機関による事業性評価について・ 平成26年10月24日
金融庁HPより)

上記したように「企業の事業内容・つまり今」と、「成長可能性・未来」を見ることを
銀行に求めています。またこうした事業性評価ができる能力を『目利き力』と表現して、銀行員には目利き力が必要だとしています。

ところで実際の現場では、この事業性評価はマニュアル化されています。
その内容は若手銀行員でも理解できる程度の簡単、シンプルなものです。
例えばプロパー融資の申込みがあると

①調査・社長への聞き取りなどにより必要な情報を入手する

②入手した情報をマニュアルに当てはめて、マニュアルに沿って審査する
(作業は、チェックリスト的なものでマークシート入試のようなもの)

③マニュアル通りに審査すれば最後に融資の可否(貸すか貸さないか)も判断できる

ここまで、ほぼ若手銀行員ひとりで対応できてしまいます。審査にかかる時間も従来に比べ大幅に短縮されています。
また融資の稟議を決裁する支店長や本部の審査担当も、基本的にはマニュアルに沿って判断をします。なぜなら、このマニュアルこそ銀行が蓄積してきた企業のデータと先輩銀行員のノウハウ・経験が凝縮されているものだからです。(私から見れば、銀行員の教科書・バイブルといってもいいでしょう)

マニュアル化により誰でも事業性評価ができるようになったおかげで、銀行に与えられた大命題=プロパー融資への積極対応が可能になったといえます。
しかしいっぽうで、あくまでマニュアルに沿って審査するだけの銀行員が増えたことで
『危うさも垣間見える』といわれていることもまた事実です。

余談②~「過去を見る複雑な審査」について

金融庁の指示が出る以前は、銀行のプロパー融資は「過去」しか見ていませんでした。
「いままで倒産しなかったから、すぐに潰れることはないだろう」
「これだけの売上・これだけの利益をあげてきたのだから、これからもまあ大丈夫だろう」
過去の実績=つまり結果だけを分析する、それだけの審査でした。
もちろんこれが間違っているわけではありません。
しかし過去の実績だけを重視した場合、創業して間もない企業や、将来性が十分にある創業者への融資はできません。実際に以前のプロパー融資では、こうしたケースに融資することは困難でした。
私の入社当時、プロパー融資審査をするときには、とにかく過去の決算書を並べ、時系列的に数字の増減を調べました。財務分析・経営学などを学んだ人ならわかると思いますが、当時の審査では「売上高経常利益率」「自己資本比率」といった、それこそ学校の授業で使うようなことばが飛び交っていたものです。
ですからそこには今・未来の分析や予想は一切ありませんでした)

 

『危うさも垣間見える』について~今後の融資の方向性も

受験の丸暗記と同じで、若手銀行員が事業性評価をしているのは、マニュアルを見ながら機械的にやっているだけです。その銀行員自身に目利き力があるわけではありません。
もちろん、銀行のこうした融資審査を否定するものではありませんが、経験に基づく嗅覚といったものが欠けていることは否定できません。
最近は詐欺などで融資金をだまし取られる事件が起こっています。
またそこまで悪質ではなくても、融資した途端に倒産したケース、あるいは最初から計画的な破産・逃亡など、悪い人達からいいように「カモにされている」事例もあります。
これらの根底には銀行員の経験不足、目利き力不足があると思います。
やはり「これはおかしい」「この人は怪しい」と感じられる嗅覚が、銀行員からなくなってきているのかも知れません。

今後の融資の方向性について~人的要素を排除し、よりシステム化が予測される

フィンテック

FINANCE=金融のFINとTECHNOLOGY=情報技術のTECHの組み合わせ。
ITを活用した金融サービスのこと。

トランザクションレンディング

ネットショップの売上データなどの取引記録(トランザクション)をもとに、
AIが審査する融資(レンディング)

スコアレンディング

従来の融資審査とは違い、年齢、勤務先、年収といった情報に加え「性格」「ライフスタイル」「趣味」「運動」「学習」に至る幅広い情報を、蓄積したビッグデータから
AIが分析(スコア)する融資

フィンテックに代表される技術革新と、フィンテックの中でもAIが審査をする融資が増
えてきました。特にスコアレンディングでは、一貫してAI・つまり機械が審査します。
そこには従来から今に続く、銀行での融資審査のような人的要素はありません。
銀行の融資審査では、誤解や先入観から融資を断わってしまった。あるいは正当に企業
評価ができなかったために、希望通りの条件で融資することができなかったなど、いわば
人的要因による弊害もありました。スコアレンディングでは、こうした人的要素が介在し
ませんので、いい意味での機械的な審査だといえます。
技術革新による公正、簡単便利な融資審査が進むことは歓迎すべきだと思います。

最近では『フィンテック導入により銀行員が要らなくなる』といった記事も見かけます。
私見になりますが、お客様と銀行員が向き合い、書類に署名捺印をして契約する。こうし
た昔から続く、日本独特の融資のかたちは、今後もなくなって欲しくないと思っています。
いっぽうで、フィンテックが進む中で銀行員が不要にならないようにするには、
「人間としての銀行員にしかできないこと」「銀行員の存在意義」を見つけていかなけれ
ばいけないと思っています。


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